やさしい雨音

ぽつぽつと降るそれは、部屋のバケツに落ちている
「おかぁさん、なんかいい音だねw」
そうだね。と優しい笑顔な母が好きだ。
バケツの水が溜まり、徐々に音が変わってくる。
雨音と、紙の摺れる音が響く一部屋には静寂に近い音で溢れていた。

溢れかえっていた音を塗り替えた5時のチャイム。
紙を折るのをやめや母は、静かに
「何食べたい？」
お寿司やラーメン、食べたいものはいくつか思い浮かんだけど、
「お豆腐のハンバーグ食べたい！」
頷く母は気づいているのだろううか。子供ながらにわかっている、家庭の事情。

ケチャップもないそのハンバーグとご飯。
紙の花に囲まれた豪華な食卓は、優しさで溢れていたと思う。
白いご飯と白いハンバーグ。木製の食器は素朴で自然のまま生きるように、なんだか優しかった。
ほんわりとした土日は、そのまま音を立てずに虫の音と共に終わった。

そこそこ離れた学校。近くの人と一緒に行くけど、みんなは僕とちょっと違う。
僕は本を読む、教科書もよく読む。けどみんなは、
アニメとか、ゲームとか僕の知らない話をする。
お母さんに言いたいけど、なんかだめな気がする。
お母さんをもっと忙しくしちゃう気がする、そしたら、ご飯も一緒に食べれなくなっちゃう。

「今日はみんなの宝物を紹介しましょう!」
宝物ってなんだろう？僕の大切なもの、、、
隣の席の〇〇くんは、最近買ったゲームなんだって、車で競争しておうちでいちばん上手いって。
みんなに優しい〇〇ちゃんは、髪の長いお人形さん。色んな髪型にできてかわいいんだって。

「僕の宝物は、、、」
なんだろう？みんななんですぐに分かるのかな。
僕の大切なもの、、、
「それは、、、、この本です！」
カバンから取りだした本は、みんな知らないだろうな、、
でも僕の大切なもの、お母さんから貰った本。
漢字が難しくてあんまり読めないけど、ちょっとづつ読んでる。

学校が終わって、今日もお母さんが迎えに来るまで先生と待つ。
先生は僕とよく話してくれる。それに漢字も教えてくれる。
「これは"ひでりあめ"って言うのよ、これはお外が晴れてるのに降ってる雨だね。」
透明な雲があるのかな？それとも、すっごくちっちゃい雲が雨を振らせてるのかな？

夕方と夜の間にお母さんは来る。先生にお礼を言って今日も帰る。
車の中のお母さんはいつも、ちょっと悲しそうな顔をしてる。なんでなのかな？
「お母さん僕のこと嫌い？」
悲しそうなお母さんは目を見開いた。
違うって言うけど、もっと悲しそうな顔になった。

お母さんに元気になって欲しいな。
「今日学校でね、みんなの宝物聞いたの！」
お母さんはちょっと笑顔になったけど、まだ悲しそう。みんなの宝物聞いてもワクワクしないのかな？
「(主人公)は、なんにしたの？」
お母さんからもらったこれ！って本を見せたら、お母さんが優しく笑ったの。

でも、ちょっとだけ泣いてた。
「おかぁさんのお顔が、ひでりあめだ！」
先生に教えてもらったこと言ったら、お母さんがまた泣いちゃった、、、なんでだろ？
「ありがとうね、(主人公)はやさしいね。」
また今度、お豆腐のハンバーグ食べたいな。

5/25/2025, 1:04:57 PM