夜雨と春歌

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【だから、一人でいたい。】



 一人でいることが好きだ。
 余計な気を遣わなくていいし、あれこれやり取りするのに必要なエネルギーも使わない。要するに楽なのだ。
 楽できる方、便利な方へと社会を発展させてきた現代人が、楽だからと一人を選択することを誰が非難できるだろうか、いやできない。夜雨は思う。思うが、それでも現実は一人でいることが許されにくかったりもする。
 そもそも一人の時間が大好きなのだが、本当に独りにはなりきれないのだから、難儀だなぁと自分でも思う。
 あんまりにも長く一人でいると、なんだか鳩尾の辺りが重くなってしまう。一人言に、一人言じゃなくなる反応が欲しくなってしまう。それで誰かと関わると、またひどく疲れてしまうとわかりきっているのに。

 それもこれも全部、春歌のせいだ、夜雨はまるっと責任を押しつける。

 春歌という存在のせいで、それが傍にないとき、自分は今一人なのだと気づいてしまう。
 一人きりの空間に、何かが足りないような、本当は何かが在ったような、そんな気がしてしまうのだ。
 知らなければきっと、ずっと知らないままでいられた。

 だから、一人でいたかった、のに。

 寂しさなんて、与えないで欲しかった。

7/31/2023, 11:20:21 PM