無音

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【27,お題:やるせない気持ち】

昨日兄が死んだ。

俺は泣けなかった、泣く資格なんて無いと思ったから。



道路で転んだ時、運悪く走ってきた車に跳ねられてそのまま亡くなった兄
みんな事故だって言うけど、俺は知っている。

自殺だ

本当は自殺なんだ兄貴は

少し前に言われた「生まれ変わったら長生きしたいなぁ」って言葉
死ぬ前の日に電話ごしに言われた「俺、明日死ぬんだ」って言葉

俺はなにも言えなくて、ただ黙って話を聞いていた

兄貴は最後に言ったよ

「弱い兄ちゃんでごめんなぁ...颯、お前は長生きしろよ」

じゃあな、って言われて電話が切れた。
あの時かけ直せばよかったんだ、家まで押しかけてやればよかったんだ
「なんで死ぬんだよ、ふざけんなよ」って何時間も問答してやればよかったんだ。

火葬される前の棺に入った兄貴は、なんだか苦しさから解放されたような顔をしていて
どろどろとした感情に任せて棺に花を詰め込むと、さっさとその場から離れた。

兄を止めれなかった俺は、共に悲しんでいい人間ではないと思ったから


葬儀が終わって、家までの道を1人行く
やるせない気持ちに飲まれながら、ふらふらと歩く帰り道

あの時止めればよかった、でもそうしたら兄貴はもっと苦しむことになったっかもしれない
兄が楽になれたならこれでよかったのだろうか?

...でも、なんで。どうして

「俺はそんなに頼りなかったのか?...兄貴」

8/24/2023, 10:53:21 AM