大好き
貴方は、憶えていますか?
私と貴方が出逢った、
あの日のことを。
朝の光のように優しい、
貴方の微笑みを見て。
あの瞬間、私は初めて、
この世界が、優しいものだと、
感じたのです。
それまでの私は、
ただ息をしているだけで、
生き方すら、知らなくて。
貴方に救われて、漸く、
「生きる」ということが、
赦されたのです。
貴方が、私を見てくれた。
人として、在ることを認めてくれた。
笑って、話しかけてくれた。
たった、それだけで、
私の全てが、変わったのです。
貴方は知らないでしょう。
私がどれほど、どれほど、
貴方を――大好きだったか。
貴方は、言ってくれましたね。
「君が大切だよ」と。
でも、私には、
それでは、足りなかったのです。
私は貴方を、
すべて、隅々まで、心の奥まで、
独り占めしたいと、
願ってしまいました。
あの男の影も、他の誰かの声も、
何も届かない場所へ、
貴方を連れていきたかったのです。
だから。
一緒に逝きましょう。
この苦しみに満ちた世界よりも、
あちらの方が、
きっと――優しいから。
怖がらなくていいのです。
私が、そばにいます。
貴方が寒くないように、
ちゃんと、抱き締めてあげます。
ふたりなら。
もう、誰にも邪魔されない筈。
もう二度と、貴方は、
他の誰かを見たりはしない筈。
さあ。目を閉じて。
私の手を、握ってください。
貴方の、最期の一呼吸を、
そっと掬い取り、
抱き締めましょう。
それこそが、
私と貴方の「永遠」になるのです。
貴方が――
大好きです。
3/19/2025, 8:35:41 AM