『終わりなき旅』
カンカンと奥の工房から鉄を打つ音が聞こえる。
救世主が世界を救っても、たとえ救わなくても世界は回る。刀鍛治はひたすら手を動かす毎日だ。
それが敵を倒すためだろうが護衛のためだろうが、包丁を研ぐためだろうが関係ない。
依頼を受けたらきちんと仕事をこなす。
ただ、それだけだ。
「世界を救ったらさ。私のために小刀を作ってよ」
そう告げた救世主は、まだ若かった刀鍛治にそう告げると敵のアジトへと旅立った。同じくらいの年頃だった。
まだ彼女は店を訪れてこない。
救ったあとも、果てのない旅を続けているのだろうか。
旅が楽しいって言ってたしな。
彼女との約束のため今日も腕を磨く。
長い長い旅路の途中で寄り道してくれることを願いながら。
5/30/2024, 11:27:28 PM