時雨 天

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心の灯火



匂いを嗅ぐとわかる、アナタは今、とてと悲しんでいる。
外の世界で何があったかわからない。私は外に出られないから。
小さは声で声をかけても、今は一人にして欲しいと言われた。
何もできないのが嫌なので、アナタの側に寄り添う。
私ができることは、たったこれだけ。黙って側にいること。
手で少し、側から離されても、また元の位置に戻る。
何度も、何度も、離されても、元の位置に戻る、必ず。
私は絶対に側を離れない、アナタを一人にしない、させない。
ふと、アナタの心が冷えているように感じた。頭の上に落ちてくる冷たい雫。
見上げるとアナタは悲しそうな表情をしている。すびっと聞こえる音。
私はアナタの太ももの上によじ登り、丸まった。アナタの冷たい、冷たい心を感じたから。
冷たいなら、温めればいい。私の熱をあげる。ふわふわ、ぽかぽかする熱を。
すると、私の頭を優しく撫でてきた。何度も、何度も。その手は心地良い。
ふふっと声がした後に、ありがとうと言われた。
冷たい心に、暖かい火が灯った。よかったよかった、一安心。
私はピクピクと鼻と長い髭を動かし、にゃーっと鳴いた。
たとえ、アナタの心の灯火が消えたとしても、私がアナタに火を灯してあげる。いつでも、何度でも――

9/2/2023, 11:53:44 AM