オレはアイツよりもアタマがいい。こないだの算数だって100点だった。アイツのは、うしろからこっそりのぞきみしたら37点だった。ザマアミロと思った。
うんどうだってオレはとくいだ。50メートル走はクラスで1ばん。あのノロマは10ビョウいじょうかかってる。ジョシにもぬかされてて、ホント、ダサイヤツ。
今日の体育も走るのかと思ったけど、先生がみんなをビョードーに分けて4チームにわかれてタイコーリレーをしましょうと言った。クラスで1ばん早いオレは青チーム。あのノロマは……おなじ青チーム。なんでだよ。先生にコーギしたら、
「翔くんはクラスで1番早いけど、優くんは走るのあんまり得意じゃないの。だから同じチーム。これが平等」
さいあくだ。こんなオニモツいらない。チームであつまって走るじゅんばんを決めるとき、ノロマがオレにむかって「よろしくね」と言ってきた。けどオレはムシをした。
「いちについて、よーい、どん!」
「いけー!」
「がんばれーっ」
先生の声のあとにピストルがきこえて4人のソーシャがいっきに走りだした。オレのチームのヤツは、2ばんだ。オレのばんまでこのままいけば、かてる。さいごにオレがぬけばいいんだ。
「あっ」
オレのチームのヤツがバトンパスがうまくいかなくておとした。あのノロマだ。
「……なにやってんだよ」
いっきにオレのチームはペケになった。オレにまわってくるときにはものすごい差をつけられていた。めちゃくちゃがんばったけど、けっきょくリレーはそのままビリでおわった。アイツのせいだ。アイツがよけいな足ひっぱったせいで、まけた。
「あの、翔くん……」
うしろから名前をよばれた。ふりむかなくても分かる。オレはもっていたバトンを地面に思いっきりなげおとした。
「オマエのせいでまけちゃったじゃないかよっ」
「……ごめん」
ムカつく。コイツのせいでまけた。コイツがいなければぜったいにかてたのに。
「きゃー優くん!だいじょうぶ?」
ジョシの声にびっくりしてふりむいたら、やっぱりそこにノロマオニモツがいた。りょうひざが、血まみれだった。
「うわ、だいじょぶかよ、優」
「いたそう……」
「せんせーっ、優くんがケガしてまーす」
クラスのみんながノロマのまわりにあつまっている。はんたいに、オレのそばにはだれもいない。
「……んでだよ」
ソイツはヤクタタズだったんだぞ。イミ分かんねーよ。ムカついて、バトンをもう1回なげすてようと思っておちていたそれをひろった。大きい音だしたらだれかがこっち見てくれると思ったから。
でも、もうみんな保健室めざしてオレからずっとはなれていた。なんかもう、むなしくなってやるのをやめた。
ひろったバトンをじっと見ると、赤っぽい茶色っぽいよごれがついていた。ハッとした。アイツの血だ。
「……バカみてえ」
でもやっぱり、言ったオレがバカみたいでむなしかった。
7/13/2023, 1:09:15 PM