絵が好きだった。
クラスの友だちは、よく僕の絵を見に来る。
手に取って、力みすぎて破ってしまう。
「悪ぃ〜」
「大丈夫」
そんな言葉を繰り返すうちに、また破られる。
「わざとじゃねぇから、な?許してよ」
「大丈夫」
ずっと繰り返してた。
嫌ではなかったし、話しかけてくれるだけで嬉しかった。まあ、困ってはいたけど。仕方ないよね。
ある日、友だちとの思い出を絵に描く授業があった。
僕は沢山話しかけてきてくれた時の絵を描いた。
だけど消しゴムで線を消す時、誤って絵を破ってしまった。
それが上手く絵とマッチしてくれたおかげか、絵を破ってしまった時の思い出を描いた。
「わざとじゃないんだ。ね?許してよ」
ある日、友だちに呼び出された。
あの絵を描いたことを、酷く怒っていた。
「今すぐ違うのに取り替えろよ」
「ごめん、それは」
「大丈夫、だよな」
「そうだね、大丈夫」
また破られてしまっては、困っちゃうからな。
【友だちの思い出】
7/6/2023, 10:48:42 AM