【夏草】
夏草生い茂る空き地
そこに転がる野球ボール
いつからそこにいたんだ、と
頭の中で語りかけながら拾い上げる
雨が降る日もあれば
泥に塗れた日もあり
強い日差しに晒された日もあっただろう
真っ白だったはずのボールは汚れて汚れて
誰に持ち帰られることもなくここにあった
それを守るようにして生えている夏草は
きっと優しい傘になったり
泥除けになったり
日陰を作ってくれたりした日もあっただろう
日が落ち始めている
物悲しげに蝉が鳴いている
夏が終わろうとしている
僕は握ったボールをなんとはなしに投げた
汚れたボールが一瞬
橙色の日に照らされて輝いた気がした
8/28/2025, 6:30:41 PM