すべて物語のつもりです

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「もう終わりにしよう。」
 銃口はわたしの額を捉えていた。
「それはこっちの台詞よ。」
 動揺を隠すため、相手を精一杯睨みつける。けれど、彼はそれを全て知っていると言うように、口元にわずかな笑みを浮かべた。
 遠くから銃声が聞こえてくる。爆発音や建物が崩れ落ちる音、悲惨な音の隙間からは誰かの悲鳴が聞こえる。
 こんなこと、もう終わらせなければいけない。上の人間の欲を満たすためだけの戦争なんて、馬鹿げている。
 誰にも言えない思いを、もし、今わたしに銃口を向ける彼も持っているとするのなら。
 わたしはどこから間違っていたのだろう。
「くだらない。」
「同感だ。」
「あのクソデブ達を殺してやりたかった。」
「ああ、そうだな。俺がちゃんと殺してやるよ。最初はお前だけどな。」
 視界がすでに歪んでいた。まばたきをすれば、溢れてはいけないものが溢れてしまうとすぐに分かった。だから、睨みたくない彼を睨みつけていた。
 誰かの痛々しい悲鳴が聞こえる。幼い泣き声も聞こえる。そして、絶えず爆発音が響いている。
「ごめんなさい。」
 まぶたを下ろした。遠くで銃声が聞こえた。
 

7/15/2023, 12:01:51 PM