お題:一件のLINE
夜9時。
「ふわぁ、眠い……そろそろ寝よう」
ベッドへ足を運び、レッツ・ダイビングとす
る時だった。
ーピロン
「?」
スマホ?今の着信音……?
勉強机に置いていたスマホを手にし、スマホの画面ロックを解除する時、一件の通知が来ていた。
あ、LINEだ。
こんな夜中に誰だろう……?
部長さんかな?
見てみると、荻くんから【今時間ある?】とメッセージが来ていた。
えっ!?荻くん!!?
荻くんとは、クラスメイトで、現在進行形で私が片想いしている男の子だ。
彼とは、1・2週間に一回連絡する仲で、荻くんと私は2人とも部活をしていることから、だいたいこの時間夜9時に連絡し合っている。
と言っても本当に1・2週間に一回連絡で、昨日連絡したばかりだ。
二回目以降の連絡なんて、初めて……。
どうしたんだろう?
不思議に思い、画面ロックを開け、メッセージに既読して返事をした。
【大丈夫だよ!どうしたの?】
メッセージは、わずか5分後に返事が来た。
【話したいことあって。電話に替えていい?】
電話……!?
今までそんなことなかったのに…!
もしかして何か悩み事かな?
荻くんには、いつも助けてもらってばっかりだし、私も荻くんを助けられる人になりたい!
そんな意気込みで、メッセージを打ち返事をした。
【全然いいよ!】
返事はすぐに既読がつき、電話に変わった。
私は思わずうわっと驚いた。
《ーーーもしもし?荻だけど》
《あ、荻くん!花田です!》
《電話ありがと》
《こ、こちらこそだよ!荻くん、電話したいなんて今日初めて言ったし》
悩み事があるかもだとはいえ、電話なんて嬉しいっ…
学校に一緒にいる時よりも声、近いっ…
《……うん、花田に話したいことあって》
《?話したいこと?》
《……大した話じゃないんだけど、ほんと、学校でも聞けることだと思うんだけど……》
さっきから、ゴニョゴニョと誤魔化すように話す荻くん。
もしかして、私じゃ、頼りないのかな……?
……。
《荻くん》
《あ、悪い。えっと俺……》
《私荻くんの話ちゃんと受け止めるよ。私いつも荻くんに助けられてる。だから私も荻くんが何か困ってることあるなら助けたい。頼ってほしい、私のこと》
《……花田》
沈黙の空気が漂う。
わ、私口走っちゃったかな……!?
荻くん、話したいことがあるだけで困ってることなんて口にしてない。
私のバカ!お節介野郎!
《花田》
《は、はい》
荻くんに名前を呼ばれ、思わず声が裏返る。
わっ、変な声出しちゃった…!
《花田ってさ、好きな奴いんの?》
《へっ、ど、どうしてそんなこと……》
まさか好きバレ……!?
どうしよう、フラれちゃう……!
《……好きだよ》
《へっ?》
《花田のこと。花田に好きな奴いるって分かって俺焦っちゃって。だから、告白した。俺のこと1人の男として見てほしくて。……ごめん》
《荻くん……》
《返事は分かってるから!きょ、今日はこれで!おやすみ》
《ま、待って荻くん……!》
《え?》
荻くんが私のこと好きなんて思いもしなかった。
だけど、私に好きな人がいて、それが荻くんじゃないこと誤解しちゃってる。
荻くんは、勇気持って言ってくれたんだ。
だから、私も言わなくちゃっ……!
《わ、私も荻くんが好き!》
《……え?》
《私の好きな人、荻くんだよ!私、荻くんが好きです!》
《花田……マジなの?》
《マジだよっ…!》
《ほ、んとに……?……っ、幸せすぎじゃん》
電話越しの荻くんの声はわずかに掠れていた。
《荻くん…っ》
《花田、好きだよ》
もう一度聞いた「好き」。
胸がきゅっと苦しいけど、すごく嬉しかった。
どうしよう、私まで泣きそうだよっ…
《荻くん、私も好き》
《知ってる》
泣いてそうな声をしながらも、優しい笑顔を浮かべてそうな荻くん。
《告白してよかった。フラれること前提で告白したから、マジでビビったー》
《私も、両想いだなんて、びっくりしちゃったよっ…》
《だな。……花田、また明日連絡する》
《へっ》
《花田の声聞きたい。だめか?》
そんな、嬉しいこと言われるなんてっ…
《うんっ、しよ。明日も》
《っしゃ!》
喜びを声に上げる荻くん。
《じゃ、また明日、学校で》
《うん、また明日》
電話を切って、不意に空を見上げる。
今日は月も星も綺麗だ。
明日が楽しみだな。
そんなことを思いながら、私は温かいベッドで、温かくて優しい夢を見た。
7/11/2024, 10:42:31 AM