俺たちの出会いは……彼女が倒れて救助に向かった時だった。色々な人に囲まれて賑やかで楽しそうだったのを覚えている。
しっかりした人達が多いの中、一際弱くて心許ない感じがあって、まるでロウソクの火みたいに軽い吐息で消えてしまいそうだと感じて、俺も守らなきゃと思っていた。
同じように彼女が怪我をする時、俺が救助に行くことか多かった。本当に偶然なんだけど。
怪我をした彼女には、いつも人がいた。大切にされていたからこそ、心配されて、賑やかで、楽しそうだった。
出会う時はいつも賑やかで、楽しそうで。
痛いと泣きそうな声で小さく叫ぶこともある。けど、心配されると心配ないと笑顔を向ける。
そんな彼女には面倒見てくれる人達が周りにいて、甘やかされているとは思っていたけれど、彼女はそれに甘んじることはなくて……。
彼女がセクハラされた現場に居たこともあったけれど、己の拳でセクハラした男をぶちのめす程になっていた。
まあ、彼女がぶちのめした男が俺の患者だったから、治療は複雑な気持ちだったなんて言えない。
いつも笑顔が多くて、賑やかで、楽しそう。
俺の周りも賑やかではあるけれど、なんだろう。賑やかの種類が違う。お笑い全振りした仲間たちとは違って、穏やかな気持ちになる。そんな賑やかさ。
少しずつ、少しずつ視線を彼女に向けることが増え、彼女に想いを募らせていることにも気がついた。
始まりはいつも賑やかで、楽しそうなところから。
「ただいま帰りましたー!!」
玄関の扉が開き、元気の良い声が響き渡る。廊下に足を向け、彼女の顔が見えると元気いっぱいな笑顔を俺に向けて抱きついてくれる。
「ただいまですー」
「うん、おかえり。お疲れ」
君との始まりはいつも賑やかだ。
おわり
一五七、始まりはいつも
10/20/2024, 12:07:00 PM