頭に鈍痛がある。
別に殴られたとかそのようなことではなかった。記憶がないのには覚えがある、というのは何か矛盾しているが、原因には心当たりがある。
深酒だなぁと何度か同じ目に遭っているので心の内で反省する。そこまで後に残るような体質でもないので、少し鈍く気持ちが悪い、という程度だったが。
身の危険の心配は全くなかった。そもそも前後不覚になるほどの飲酒は、どうせ他に恋人のいる奴らかあいつとしか飲まないので。
音を立てて部屋の扉が開いた。考えていた相手で頭を押さえつつ息を吐く。まぁこいつ以外が来たら恐怖でしかないのだが。
湯気が立つ盆を手に持ち、器用に寝台脇に腰を下ろして卓にそれを置いた。味噌汁と、お茶漬けだろう。飲みすぎた次の日、必ずこれを出されるので慣れたものだ。
つまりは相手が家主とはいえ朝食の用意をしてもらうまで、何度も寝過ごしているのだが。
のそのそ、という擬音が相応しい速度で寝台から起き上がり、朝の挨拶を交わす。顔も洗ってはいないが、そのまま朝食をいただくことにする。
こういうまめなところがモテる要因なんだろうな。
相変わらず起き抜けには勿体無いほどにしたが幸せな味噌汁を啜りつつ、ぼんやり相手を見つめた。
7/11/2024, 10:05:53 AM