「こんな夢を見た」から始まる小説

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こんな夢を見た。私は少女とともに白詰草の畑で花冠を作っている。慣れない私を尻目に、少女は鼻歌を歌いながら、花冠を作っている。
「出来た!あと、これ見つけたからどうぞ」
彼女は私の頭に花冠を被せ、四つ葉のクローバーをくれた。
「ありがとう」
「そっちの花冠はまだ出来そうにないね。他に何か作ろうかな」
私の手の中の花冠を見ながら、また白詰草を一、二本摘んだ。慣れた手つきで白詰草を編んでいる。何を作るんだろう。
「ほら、見てないで自分の完成させて?」
視線を感じたのか、彼女は手を止め苦笑した。
「そう言われても、花冠なんて作ったことないから」
「わたしは、一から君の手で編んだ花冠が欲しいんだけど。しょうがないなあ」
貸して、と差し出された彼女の手に途中までぐちゃぐちゃに編まれた花冠を渡す。
「あー、見事にぐちゃぐちゃだ。ちょっと解かないと」
「だから慣れてないし。ぐちゃぐちゃが嫌なら、それ捨ててよ」
「ぐちゃぐちゃでも君が最後まで作ってくれたんならわたしは嬉しいんだけど」
「私は気になるから。どうせあなたにあげるならきれいに編めた花冠がいい」
そう言うと彼女は手を止め、大きな目をさらに大きくした。
「…本当、そういうとこ」
「何が?」
「何も!だったら徹底的にきれいに編めるように、何個でも作らせるんだからね!」
急にやる気を出した彼女に、私は手が痛くなるまで花冠を作らさせることになった。日が落ちる頃に、ようやく私は満足する出来の花冠を作り上げた。隣でヘトヘトになった彼女の頭に花冠を載せる。
「やっと、出来た…。君、凝り性なんだね。形だけなら五個目で出来てたでしょ」
「だって、あなたにあげるものだからね」
「また、そういうこと言う…。それにしても、本当にきれいに…あれ?」
「もらった四つ葉のクローバー編み込んでおいた。可愛いでしょ」
彼女は大きなため息をつくと、花冠をぎゅうと胸に抱いた。
「わたしがあげたもの、またわたしに返すなんて…」
「嫌だった?」
「ううん。ところで、白詰草って何の意味があるか知ってる?」
「知らない」
知ってるが、知らないフリをする。それは彼女にとって私に言ってほしい言葉だから。
「嘘つき、知ってるくせに。わたしと初めて会った日にいろんな植物の名前とか由来とか教えてくれたじゃない」
「そうだっけ。私、適当なこと言ってたかもよ」
彼女は恨めしげに睨むと、私の左手をつかみ、指先に何かを通した。
「白詰草の指輪…?いつの間に」
「わたしにかかれば片手間で出来るよ。それで、いつになったらちゃんと言ってくれるの」
彼女の気持ちは分かっている。だが、下手に軽い気持ちで返事すると、彼女が傷つくだろう。
「やめようよ、こんなの。私、あなたと植物の世話したり花冠作ったりするだけでも幸せだよ。無理に関係を進める必要なんかないよ」
「いや。君はそれでも良いかもしれないけど、わたしの気持ちはどうなるの?」
どうしてこんなことに。
「わたし、諦めないからね。大好きな君に愛の告白してもらうの」
彼女は私の左手をとり、恋人繋ぎのように指を絡めた。
「時間ならたくさんあるから」

3/5/2026, 3:46:04 AM