300字小説
ルール破りの代償
俺の実家には不思議なルールがある。盆前の新月の夜、家の離れに一族の亡き人が集まるというんだ。
その日は朝から離れの部屋を綺麗に掃除し、沢山の湯のみを乗せた盆を運ぶ。急須と茶筒を用意し、火鉢に火を熾し、入り口の戸に鍵をかける。その後は夜が明けるまで絶対に離れに近づいてはならない。
でも俺は好奇心から茶筒の底にワイヤレスマイクを仕込んだ。そして、自分の部屋でイヤホンで聞いていたのだが……。
「……何か聞こえたのですか?」
「ああ、何か囁くような沢山の声が。その夜からだ、俺はこういう場所に来ると誰かの囁き声が聞こえるようになったんだ」
先輩が道路の脇に目を向ける。そこには缶の花瓶に枯れかけた花が飾られていた。
お題「ルール」
4/24/2024, 12:13:19 PM