「久しぶり」
君が笑った。
全く変わらない笑顔を浮かべて色素の薄い髪を光に透かす。
燃えそうなほどに強い日差しが肌を焼いた。
「一年ぶりな」
眩しそうに目を細めて俺を見上げる君の肌は、全てを反射するほどに白い。
暑さなんてものともしないように咲き誇る花を墓に供える。
形のいい眉毛が困ったように、嬉しそうにハの字を形作った。
「こんなに綺麗なの貰っていいの?」
「いいよ」
もう生温くなりはじめているであろう水を柄杓ですくって上から掛ける。これで本当に君は涼しくなるのだろうか。
「毎年ありがとね」
「別に」
柄杓が手桶の底に当たって音を立てる。
並々汲んだはずの水はいつの間にかほぼなくなっていた。
「今何歳だっけ」
「23」
「1番楽しい時期じゃん。こんなことしてていいの?」
「いいよ。俺がしたいだけだから」
「そっか。ありがと」
囁いた君が背を向ける。
語尾が少し震えていたことに気づいてしまった。
「また来るから」
真上に昇った太陽が、雲ひとつない青空から光を注ぐ。
はじっこに咲く向日葵を見つめていた君が仄かに赤くなった目尻を擦って笑った。
「また一年後ね」
「うん」
出来る限り明るい声を出す。
自分が上手く笑えているかはわからなかった。
8月、君に会いたい
8/1/2025, 11:10:29 AM