霜月 朔(創作)

Open App

さぁ冒険だ



月のない夜。
独り、彷徨います。
影だけは、静かに、
私に寄り添ってくれます。

冷えた指先に、
貴方の温もりを探します。
ですが、もう、
幻すら残っていないのです。

貴方は笑っていました。
最期の瞬間まで。
なのに、
貴方の瞳に映る私は、
狂気に染まったまま、
貴方に刃を向けていました。

私の手で、
余りに醜悪なこの世界から、
救われた貴方は、
赤に染まり、
とても美しく、愛おしくて。

闇が深く、深く、
私を飲み込んでいきます。
愛しい貴方を想うたび、
私は私でなくなっていくのです。

「さぁ、冒険だ」と嘯きながら、
貴方の温もりを求めて、
私は漆黒の森を、
彷徨い歩くのです。


2/26/2025, 8:54:45 AM