箱庭メリィ

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「入梅の頃。覚えやすかろう?」

彼はそう言って目尻を下げた。チャームポイントの太眉と膝小僧が本日も愛らしい。

梅雨入りを知らせるその日は、彼の誕生日である。
正確に言うと、彼がそう決めた日である。

彼にとって大切な日。眼前にいる彼女に救い出してもらった日。

あの日手を引いてくれた彼女の微笑みは、彼は一生忘れないだろう。

しとしとと遠くの方で雨の降る気配がした。匂いもする。もうすぐこちらにも雨雲がくるだろう。

テレビのニュースで、今年は例年より早く梅雨入りしたと言っていた。
また一年が過ぎた。今年も彼女と共に過ごせることを彼は心から喜んでいる。彼女や同居人は、きっとパーティーとやらもして盛大に祝ってくれるのだろう。

梅雨入りのジメジメとした空気は、昔のことを思い出す彼にとって、彼の心を土砂降りに、そして梅雨明けのように晴れやかにするのであった。


/『梅雨』

あさき、〜の某彼を。
急ぎあげ。

6/2/2023, 6:57:49 AM