「泣かないで」
笑っていようよ。
きっとまた会えるよ。
そうでしょ?だから泣かないで?
そういう彼女の目尻からは一雫の涙がキラキラと光っていた。
そう言うあなただって泣いてるじゃない。
涙声でそう告げると慌てたように彼女は涙を拭って笑顔で
「また会える。だからさ、━━も笑顔!笑顔!」
私は不思議だった。
どうしてそこまで笑顔にこだわるのか。
しんみりしたくないのかもしれない、別れ際を押隠す彼女の振る舞いに無理してるのかもしれないと思った。
泣きたいなら泣けばいいのに何故、我慢してまで笑顔を大切にするのか最後に聞いてみることにした。
「なんで笑顔かって?それは、泣いたらさ、もしも、もしもだよ?もう二度と会えなかったら、最後の思い出はしんみりした悲しいものになっちゃうじゃない?」
「それより笑ったり、楽しかった思い出の方が大人になって思い出す時楽しい気持ちになれると思うんだ。」
「それに悲しかったり寂しい思い出で終わりたくないじゃない?」
「だって━━と一緒にいた時間はこんなにも楽しかったのに、それが悲しかったり寂しい思い出で終わるなんて私は嫌だよ。」
「私は━━と居れて最後まで楽しかったし、嬉しかった。そう思いたいんだ」
「つまり、ただの自己満足だね」
そう微笑む彼女の目尻からはまた一雫の涙が伝っていたけど、私は何も言わなかった。
ただ一緒に笑っていた。
11/30/2022, 1:11:26 PM