学生
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私の後ろで扉が勢いよく開いた音がしたと思ったら、急に後ろから締め付けられた。でも優しい温かさを感じる。
「…ねぇ、なにこの状況?誰かに見られたりしたら…って、ぐえっ」
力が、強い。どうにも出来ぬ私の身体。
私、勉強するために教室残ってたんだよ?寒かったから窓閉めようとしてたんだよ?なのにこんな、こう、破廉恥?な…てか部活どうした。
「アンタって、俺の事どう思ってるの」
「どう思ってるって、どうとは」
「…俺の気持ち、どうでもいいわけ」
声の主は私の後輩。
委員会が同じなだけで、他の接点は何も無い。
彼は部活内でもだいぶ活躍してるから、校内だと知らない人の方が少ないだろうな、ぐらい。
「俺、先輩に結構ダイタンな事してたと思うんだけど?」
「まぁ、確かに言われてみれば…そうかも…?」
他の後輩よりかは距離感は近かったかな…
すると、ぼーっと考えていた私を抱きしめていた腕を解くやいなや、私の身体をくるっと回して今度は向かい合わせに抱きしめてきた。
「…俺こんなこと、先輩にしかしないんで」
そこまで私と身長が変わらない彼が耳元で囁いてくる。パニックになる私は落ち着こうと目を閉じると、胸元に違うタイミングで心臓の鼓動が追っかけてくることに気がついた。
その音が、彼の鼓動であることは深く考えなくとも分かるものだった。
気がついた途端、彼が【後輩】ではなく【一人の男性】であることを実感して顔に熱が集まっているのを感じる。多分、耳まで真っ赤だろう。
再び腕の力が緩められて、やっと解放だ…と思っていたら彼が力強い眼差しをこちらに向けていた。
「覚悟してた方がいいんじゃない?」
じゃあ、と言って教室から彼が出ていくと、その場でへなへなと座り込んでしまった。
というか、なんでこのタイミングで来たんだ。
「…どうしたんだろ」
彼も、私も。こんなの、初めてだ。
先程の出来事を思い返してみると、私の人生で聞いたことの無い、ドキドキなんかで収まらないような心音が身体中で鳴り響いていた。
(委員会終わってから先輩が違う男に笑ってたの見てムカついたとか言えるわけないでしょ…)
20250205 【heart to heart】
2/5/2025, 11:37:12 AM