2024.02.19
お題:今日にさよなら
#.hpmiプラス(?)(👔)(セリフ無し)
真夜中、とある建物の前で足を止めた。傘のせいであまり良く見えないが、目的の部屋に電気が着いていることは辛うじて分かる。
昨日のこの時間帯も電気が着いていた。朝は一般的な会社勤めの人と同じ時間帯に家を出るようだし、あまり遅くまで起きていると疲れが取れないよ。
そっか、眠れないのかな。それなら明日はアイマスクをポストに入れようかな。
そんなことを考えながら、今日はお手紙と一緒に手作りのお菓子をポストに入れた。
翌日、私はいつもよりだいぶ早めの時間に昨日の建物の前に来ていた。
うーん、電気をつけるような時間じゃないから家に居るかどうかわかんないや。そもそも彼は世の中で言うところの真っ黒な会社に務めているみたいだから、まだ家に居ないのかも。
そうだ、今日のプレゼントはまだ選んでいなかった。今からプレゼントを選びに行って、それから会社の方に行ってみよう。そう思って私はその場を後にした。
プレゼントを選び終わって彼の会社の近くに着く頃、運がいいことに彼が外回りから帰ってくるところが確認できた。
近くにある喫茶店で再び彼が出てくるのを待つ。その間、彼の様子をノートにメモしたり、やりたいことリストを埋めたり、あとは今日のプレゼントをちゃんと持ってきてるか確認したりと、中々落ち着かない時間を過ごしていた。
そうこうしないうちに草臥れた男――私の想い人が会社からでてくる。
気付かれないように少し後を追いかける。少し目立つ赤髪を目印に、近過ぎず離れ過ぎない程度の距離を保って。
それにしてもやけに周りを警戒しているみたい。なんでだろう。貴方に害をなす人間なら、私が全員排除してあげるから気にしないでいいのに。
そうして彼を追いかけて、再び彼の住む建物へとやってきた。これから私がしようとしていることを思うと、酷くドキドキして、それでいてとても満たされるような気分だ。
これから私は彼が家に着いて少し落ち着いた頃を狙って、インターホンを押す。
その時私は今日に、今日までの私にさよならを告げるのだ。今日までの「彼が認知していない私」に。
明日からは彼の彼女になれるんだから。そうして新しい私へと生まれ変わるの。
私の口は自然と弧を描く。
「あああ貴女は誰なんですか…!?」という絶叫を聞くまであと十数分。
2/18/2024, 6:24:57 PM