せつか

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「あー!」
アスファルトにぽとりと落ちた、薄いピンク。
灼熱に触れた塊はみるみる溶けて、どろりとした汚い液体になっていく。
「もったいねー。250円くらい損したな」
ケラケラ笑いながらコーンを齧っていると、ジトリとした目に睨まれた。
「徳を積んだんだよ徳を!」
そう言ってほんの少しだけ残ったストロベリー味のアイスクリームを、アイツはほとんどヤケクソみたいに流し込む。
「蟻に施してやったんだよ!この猛暑のなか必死で生きてる蟻に特別手当!」
言葉のとおり、灰色とピンクが混ざったアスファルトには蟻が集り始めている。
「そのうち宝くじ当たるからなー! 楽しみだ!」
――なに言ってんだか。
道の少し先に自販機を見つけた俺は、アイツを置いて走り出す。

「だったら俺は石油王になれるな」
追いついたアイツの頬に冷えたペットボトルを押し付けてやると、アイツは一瞬目を見開いて、ニヤリと笑った。

END


「こぼれたアイスクリーム」

8/11/2025, 5:21:33 PM