沁み圖書房

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もう一つの物語

もう一つの物語って聞くと、今この文章を書いている自分と同じ世界で、別の自分がもう1つの人生を歩んでいるドッペルゲンガーとか、違う選択肢を選んだ自分が、別の人生を歩んでいるパラレルパーワールドとか、全く違う世界で自分と違う人生を、今文章を書いている自分が歩んでいる異世界転生とか、いろんなパターンのもう一つの物語が、空想上でやっぱりもしかしてあるかもしれないって視点で描かれることが多い、と思う。

確かにそんな特別で特異な現象に巻き込まれるんだったら、と気持ちを寄せてしまうこともわかるけど、そんな大層な視点でなくても、もう一つの物語が、自分のそばに、気づけないほど小さいけれど、ちゃんと存在している。

あの時、君を選ぶ選択をしていたら、きっと私達はもっと仲良く出来ていたのかなとか、気軽に友達に戻れたのかななど、最近君と親しくなった季節が近いから、ふと考えてしまう。

クリスマスは会えないけどと言って、街中を彩るツリーが無くならないうちに食事に誘ってくれた君と、面と向かって話すことは、もしかしてないのかもしれない。

ないことが、今ちょっと寂しいと感じるのは、秋が本格的にぬくもりを恋しくさせているせいなのだと思い込むことにしている。
そうしないと、もう一つの物語があったかもしれないと考えてしまうからで、それはきっと、今ある私の選択を、間違ったと考えていることになるからだ。

人は他人を思いやり、自分を大切に、悦を感じて、生きていくことが健康的であるというのが私の価値観だから、間違えて、寂しくて、もしもって想う、ありそうでなかった未来の選択肢は、もう一つの物語として美しいまま、夢に溶かして、秋のぬくもりを、今隣にいてくれる人と分け合うことが、私にとっての、もう一つの物語なのだろう。

でも、やっぱり君のことはずっと尊敬しているから、
生きているうちに、少し成長した私で、笑顔を交わしたいと思うよ。

10/29/2023, 1:52:25 PM