エリィ

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 やりたいこと……か。
 そうだな。やっぱり彼女が欲しいかな。
 例えば、眼鏡の似合うストレートロングの可愛い子。ツンデレだと尚良し。そして、いつもこう言うんだ。

「いつまでも寝るな! 起きられなくなるだろう」
「少しは口角を上げてみろ。そんなこともできんのか」
「手が震えるだと? そんなときは息を深くはけば解決する」

 ……その人、ツンデレで済むのかって?
 俺言ってて謎になってきた。でもさ、俺その子と付き合い長いのよ。
 幼馴染ってやつ。
 だから俺に対してだけ、ってのが悲しいがこんな喋り方するのよ。

 こういう子なんだけど、俺はその子と付き合いたいんだよ。ああ、そうさ。俺その子のこと大好きなのよ。
 こんな喋り方しかしない子なんだけど、俺のこと元気づけようとしてくれてるんだよな……多分。
 でも心が弱ってたら傷つくね。もっとこう、優しい言い方ないのかよって。
 でも一度だけあったのよ。
 俺の手を握って、多分頬に当たってんじゃないかな?なんか温かい水で濡れてんの。
 多分、俺のために泣いてるんじゃないのかな。
 そう思ってから自覚したんだよね。俺やっぱりこの子が好きなんだって。

 目が覚めたら何もなかったから、まあ夢だったんだろ。その子の態度も変わらなかったし。それでも俺の中だけは好きだって気持ちは残ってたね。
 ちなみに他の人には普通に喋るぜ。たまにこの扱いの差に涙が出てくるよ。

 告白しないのかって?
 分かれよ。
 出来るわけ無いだろ? 出来てたらもう遠い昔に言ってるよ。
「ずっと好きでした。あなたしかいません。これからもいません。最期まで大好きです」
 でもさ、そんなの重くね? こんな事言われたらマジで引くだろ。そもそも俺のこと好きなのかどうかもわかんないのにそう言う勇気はなかったよ。
 でも、悔やむのもあれだからさ、言ってみようかなんて思ったりするけど、こんななりで言ってしまったら……

 答えが、はいでもいいえでも、その子引っ張るんじゃないかな。
 だって俺、余命……あと100年くらい……

ってお医者さんに言われたんだ。

******

 俺は窓の外を見た。
 6月の日差しが、木の葉を通して涼しい光となり、俺のベッドに差し込む。

「だから言っただろう。体を動かせと」
「リハビリ嫌だ〜足が痛いよう」
「だからこうなるんだ」
「でも嫌なんだよぉ」
 リハビリの時間になって、嫌がる俺の布団をその子ははぎ取る。俺のギプスに当たらないように。
「全く……いつまでも歩けなければ生活に支障が出るだろう」
「だって痛いじゃないか」
 俺はメソメソ泣き真似をしてみたがダメだった。
「ほら、生活のクオリティ上げるためだ。頑張ろう」

 こうして、俺とその子は前にもまして、一緒に行動するようになった。



お題:やりたいこと

6/10/2023, 12:01:14 PM