蜂蜜林檎檸檬蜜柑

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【もっと知りたい】




姿の見えない君。見てはいけないという約束。
僕は君の事がもっと知りたくなっていた。





━━━━さとるくんさとるくん、
       どうかおいでください。━━━━
 

━━━━さとるくんさとるくん、
    いらっしゃったらお返事ください。━━━━



僕は14の頃、夜遅くに家の近くの公衆電話で、『さとるくん』に電話をかけていた。
さとるくんとはどんな質問にも答えてくれるという都市伝説の一つで、公衆電話で呼ぶことが可能な妖怪だ。
当時、心も体もボロボロだった僕は思い切ってそよ都市伝説を試してみる事にした。


━━━━さとるくんさとるくん、
       どうかおいでください。━━━━
 

━━━━さとるくんさとるくん、
    いらっしゃったらお返事ください。━━━━


僕は公衆電話に10円を入れ、さとるくんを呼ぶ決められた呪文のようなものをボックス内で呟いた。
だが、その時さとるくんは何も答えてくれなかった。
何故なら、これから24時間は携帯電話でさとるくんの返事を待たなければさとるくんは答えてくれないからだ。

およそ半日たっただろうか、自分の携帯電話から不在着信の音が鳴った。僕は少しワクワクしながら携帯を手に取り、
『もしもし、さとるくんですか?』と質問を投げかけた。
相手は案の定さとるくんで、さとるくんは『今、宮川スーパーの前に居るよ。』と答えた。宮川スーパーとは、僕の家から5分程の距離にあるスーパーだ。きっとそこから僕の元へ来るのだろう。

また少ししてさとるくんの声が電話越しに聞こえた。
『今、君の家の目の前だよ。今から家に入るね』
さとるくんの声だ。さとるくんは家に来てくれたらしい。
僕の心は少しだけ飛び跳ねた。
また数秒したら『今、君の真後ろにいるよ。でも後ろは見ないでね』とさとるくんが僕に話しかけてくれた。後ろを振り向きたくなる衝動を必死に抑え、僕はさとるくんに質問をした。
『さとるくん、僕は幸せになれますか?』
『…なれるよ』
さとるくんは少し言葉に詰まった後、答えを述べてくれた。僕は嬉しくなって、2つ目の質問をさとるくんに投げかけた。
『さとるくんさとるくん、さとるくんは僕の力になってくれますか?』
『なれるよ。なるかわりに一人の夜は絶対に後ろを振り向かない事を約束してね』
さとるくんは落ち着いた声でそう述べてくれた。
さとるくんが僕の力になってくれる。嬉しい。嬉しい。
僕は感激して
『ありがとうさとるくん。お電話切るね』と決まった言葉を言った。
ブツン-、と電話を切れば、背後にズン、と重い影が乗っかったような気がした。きっとさとるくんだ。
僕はさとるくんが力になってくれることから来た嬉しさと興奮を抱いたまま寝床に就いた。
それが、僕とさとるくんの初めて出会った時だった。

3/12/2023, 11:00:57 AM