君は授業中ノートの端に詩をしたためるタイプの中学生だった。正直内容はさっぱりわからんかった。
それでも当時ラノベにはまり物書きに憧れていたおれには君が、何か特別な才能を持った人に見えていた。
カッコイイとか天才だとか熱心に褒めた記憶がある。そうすると君は、嬉しそうにはにかんだっけ?
今どこにもいない君はおれの頭の中であざやかな放物線を描き落下していく。ガラス窓に映る温度のない太陽を何度も引き裂いて君はいつまでも落下する。
今更になって君が知りたいとか恥ずかしいことを思った。ベランダで夜風に吹かれながら、君の目線で世界を見たくて今は詩を書いている。が、それを詩と呼べるのかどうかすらおれにはわからないままだ。君ともっと素直に話しておけば良かった、なんて。
風がマンションを駆け昇り星の海で墜落する君を受けとめる。夜景の街にゆっくりと、無音のまま君が降り立つ。一瞬だけ君はこちらを見上げるとすぐに前へ向き直り、明かりのない路地へと消えていった。
その後ろ姿からいつまでもいつまでも目をはなせなくて、ベランダの柵を強く握りしめた。
夜風に吹かれるおれは、未だ初恋の中学生だ。
『もっと知りたい』
3/12/2023, 12:23:59 PM