大切なもの、と言えるかどうか。
小学校の頃に仲良しだった友だちが引っ越すときにくれた石がある。みかん2つくらいの大きさで1センチくらいの穴がいくつか空いていて中でつながっている。紐を通したりして遊んでみたが不思議な形というだけで面白くはない。彼の宝物だったのだが、どうしてもくれるというのでもらったのだ。
その友だちは、あまり恵まれずに両親が離婚して引っ越したと後から母親に聞いた。そんな暗いことなど感じさせず、いつも大きな声で笑いあった仲だった。今にして思えば僕と遊ぶ時だけ辛い環境から解放されていたのだろう。楽しく遊んでいたことばかりが思い出される。
その石は不思議なことに鳴ることがあった。
貝殻を耳に当てると海の音が聞こえるとかあるがそんな感じで、この穴が鳴るらしい。小さい時はそういうものだと思っていたが、風のない家の中でも時々鳴るので、だんだん気味が悪くなってきた。そして、何か友だちの叫びか伝わってきている感じがした。母から事情を聞いたからそう考えたのかもしれない。
でも楽しかった子どもの頃の思い出があり捨てられず、机の奥にしまい込んでいた。
それでも微かに音が聞こえる時があった。
ある時、都会で殺人事件があり犯人はその場で逮捕された。何人かが亡くなり、大勢が怪我をした。そのニュースを見てびっくりしたのは、男の名前がその友だちと同じだったからだ。年齢も同じくらい。表情は上着を被っていてよくはわからない。
心臓がバクバクした。
自分の部屋に行くとあの石が鳴っていた。
うぉーん、うぉーんといつもより激しく鳴っており、僕にはどうすることもできなかった。
4/2/2026, 12:57:14 PM