茶園

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小説 『箱庭の楽園』
*少し長いです。

 昔から続けている趣味がある。
 それは、楽園のような箱庭を作って、自分が作った生命体を住まわせるというもの。
 幼い頃自分が想像した創作キャラを、現実世界でふれあいたくて、愛でたくて創造したのだ。そして、その現実世界へ呼び寄せた創作キャラたちを、天敵や災害、食料不足など、不快なものが一切ない、何不自由ない楽園のような箱庭に住まわせたいと思ったのだ。
 計画は順調で、箱庭の環境はバッチリ。キャラたちも増え、仲良さそうに暮らしている。幸せそうで何より。こちらも見ていて幸せ。

 そんなある日、いつものように朝起きてすぐに箱庭を覗いた。
 何ということだ、創作キャラたちが大分消えてる…。居るのは数名だけ。
 どうりで静かだと思った。昨日まではいつも通りみんないたのに。
 みんなで遠足でも行ってるのだろうか、最初はそう思った。でも、夕方、夜になっても帰ってくることはなかった。
 残った数名にきいても、全員知らないと言う。
 どこへ行ったのだろう…。
 急な展開に、愕然とした。

❇️ ❇️ ❇️

 創作キャラたちは、足早に元いた場所から離れていた。
 よくよく見るとみんな解放されたと言わんばかりの笑顔。
 やがてそれぞれ自分の好きな場所に行き、創作キャラたちはばらばらになっていった。

 創作キャラの一人、ギラはとある人間の家の軒下に辿り着き、そこに住む小人たちと仲良くなった。
 小人の一人がギラにきいてきた。
 どうして故郷を出たのか?と。
 ギラは少し黙り、重い口を開けた。

 何不自由ない園で暮らしていたが、過剰に資源を取る奴らが出てきて争うようになったと。残りの人たちは貧困になって資源を毎日取り合っていたと。資源を多く持つ奴らはどんどん力がついて園を治めようとか言い出したらしい。そうなればますます自由に暮らせなくなるため、そうなる前に一致団結してみんなで逃げたのだという。

 「あの園は楽園じゃない。今いるこの場所みたいに、気の合う仲間たちと資源を分け合って、みんな一緒に幸せに暮らせる場所こそが、本当の意味での楽園だよ」

 ギラは何不自由ない幸せを噛みしめていた。逃げた他の仲間も、今同じように幸せを感じながら生きているのだった。

5/1/2023, 10:50:04 AM