太陽のような笑顔の眩しい女の子だった。
成績はダントツに良く、スポーツの才にも秀で、クラスの人気を博する美少女。度重なる告白を受け、しかしその想いを受け入れる事は無い。
正に難攻不落。高嶺の花とはこういう事だと理解した。
そして、今日。ぼくも放課後彼女を呼び出した。
「それで……伝えたい事って何かな?」
周りに人が居ないことを確認して。
開口一番───率直な感想を告げた。
「努力して得た地位や才能を天からの贈り物だと片付けられちゃうのは癪に障るよね」
「……!」
彼女は僅かに目を剥いた。
「だってそうでしょ。勉強しなきゃ成績は上がらない、練習しなきゃスポーツも上手くならない。生徒指導の先生にバレないようにメイクするのも大変だ。だからぼくは───」
そういう、隠れて努力する人を見ると。
「一人の人間として尊敬してる」
肩透かしにあったように、呆然とぼくの顔を見て、次の瞬間「ぷっ」と笑いを噴き出した。
「面白いね、君。そんな事言われたの初めて。うん、確かに天才とか可愛いとか安い感想の割に凄く努力してる。なんでか分かる?」
あまり考えた事無かったな。なんでだろう。
「私中学の頃虐められてたんだ。だから、そんな反抗心が抱かれないように努力して努力してやっと築いた地位なんだよ」
そうか……彼女にとってこの努力は生命線なんだ。
「そうだ。この後一緒にカフェでも行く?」
「遠慮しておく。クラスの男子に後ろから刺されそうだ」
「ありゃ、残念。私から誘うなんて滅多にないのに」
手をヒラヒラと振って彼女は去って行く。
あの太陽の輝きは、訳アリのようだ。
2/23/2023, 3:17:48 AM