風が吹くたび、ひらひらと舞うピンク色の花びら。
今年も、庭の桜の木が満開になった。
桜を見ると、春が来たって感じがする。
「今年も咲いたのですね」
お嬢様の声を聞いて、我に返る。
しまった。桜が美しくて、つい見とれてしまっていた。
お嬢様を放置するとは、なんたる失態。
「申し訳ございません、お嬢様。お連れせず放置してしまって……」
「ふふ、それほど夢中だったのですね。私も見てみたいです」
お嬢様は生まれつき目が不自由で、ずっと暗黒の世界で生きてきた。
お嬢様の目として支えているのが、私だ。
「桜は確かピンク色……でしたっけ?」
「ええ、桜はピンク色で、見とれてしまうほど美しくて……」
今日のお嬢様のお召し物は、ピンクの着物。
そう、桜はまるで……。
「お嬢様のようですね」
「ふふ、お世辞かしら?」
「いえ!決してそんなことは!ほんとのことです!」
なにをムキになっているんだ私は。
「そんなことを言われたのは初めてです。こういう時、なんて言えばいいのか分かりませんが……すごく嬉しいです」
お嬢様の頬は、桜のようにピンク色に染まっていた。
4/4/2025, 12:30:28 PM