「止まないね」
空を見上げながら呟く。
隣に座る君は静かに頷いた。
雨が降り続ける。ザーザーと、みんなの悲しみを代弁するかのように。
「困ったね。いつまで続くのかな」
止む気配はない。私達はここから動くこともできず、立ち止まっていた。
「いつまででもいいよ」
君が言う。
「いつまででもいいよ。君と一緒なら」
君がこちらを見て微笑んだ。
「……そうかもね」
世界に異常気象が発生していた。
まず雨が振り始めた。雨はだんだんと激しくなり、世界を水の底に沈めた。
それから暫くの時が経ったが、未だ雨が止むことはなかった。
標高の高い山の上に逃げた私達だったが、激しい雨に斜面は崩れ、危険な状態にあった。そろそろここも沈んでしまうだろう。
君の肩に寄り掛かる。君はそっと私の方を抱いた。温もりが心地良い。
止まない雨の音を聴きながら、静かに目を閉じた。
『降り止まない雨』
5/26/2024, 4:39:06 AM