「なあ君。桜咲くといえば何を思い浮かぶ?」
二人しかいない文芸部。その内の一人である先輩が黒板に赤のチョークで桜の絵を描きながら言った。
先輩は文芸部らしい活動を全くしない。でもこの部が存続出来ているのは先輩のおかげなので文句は言わない。不満はあるけど。
「受験に合格したとか告白に成功したとか……そんな感じのことですかね」
「ふむ。ならば桜散るといえば?」
「……受験に落ちたとかフラれたとか……ですかね?
というかなんなんですか、いったい」
私がそう訊くと先輩は顔だけ振り向いた。
「なんとなく気になっただけだぞ?
咲いて散るという当たり前なことでさえも何かしらのイメージを持たれてしまう。
やはり桜はそうなるくらい日本人にとってなじみ深く、特別な花なのだろうな」
そしてまた桜の絵に戻る先輩。
一寸の迷いもなく描いているけど……正直、コメントに困るくらいヘタだ。
形から桜とギリわかるけど、何かの暗号にも見えなくもない……
そんなことをしている暇があれば文芸部っぽいことすれば良いのに。という不満はもちろんある。
でもこの自由さが先輩なのだからもうそっとしておこうと微笑ましく思えるようになってきた。
……まあ、諦めたと言われればその通りなんだけど。
4/17/2026, 1:20:35 PM