白さが飽和している。
しずくの音だけが、やけに大きく鼓膜に届いた。
...もう、散ってしまうのだろうか。
桜の匂いを孕んだ風が、私の首筋を撫でると同時に
貴方の髪の毛をふわりと掠める。
まるで優しい死神が訪れたようだった。
どうか、お願いします。
連れていかないで。
どれだけ虚夢に命乞いをしようと
その影はまとわりついて離れない。
腹の底を、黒ずんだ息苦しさが埋めていく。
まだ、貴方から何も聞けていないのに。
その時ふと、瞼が持ち上げられた。
いや、それは希望から生まれた幻覚かもしれない。
ただそれでも、貴方の声だけを辿った。
ずっとずっと、忘れたくなくて。
「______ 」
桃色の花びらが、はらり、舞い降りてきた。
大切に、大切に、それを包み込む。
何度桜が散ろうと、忘れないために。
¦好きだよ¦
4/5/2025, 6:15:34 PM