27(ツナ)

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ページをめくる

彼女を初めて見たのは市営の図書館だった。
腰まである長い綺麗な黒髪から日本人とは思えない彫りの深い横顔がチラっと見えた。

伏し目がちに本を読むその目からは、まるで人形のような長いまつ毛が伸びていた。
ページをめくる度に目を輝かせて微笑む彼女にいつの間にか魅入っていた。

僕の視線に気づいたのか彼女は顔を上げて、目が合う。僕はフッと視線を逸らしてしまった。
彼女は僕の横にやって来て再び本を開いた。
「私ばかり見ていないで、あなたも本を読んでみてください。」
小声でいたずらっぽく彼女は囁いた。

9/3/2025, 10:44:37 AM