少ししなびたナスを見て、あの人は無事に帰れたかしらと思う。何せそそっかしい人だったから、うっかり道に迷っていなければいいけれど。
「もう三年になるのねぇ」
あの人がお空に旅立ってしまってから、三度目の夏が終わろうとしている。それくらい経てばすっかりあの人のいない生活に慣れてしまって、時折胸の内を風が通り過ぎることはあれど、それでもちゃんと生きていられている。
お盆とともに遊びに来ていた娘夫婦も、今朝の新幹線で帰ってしまった。きっとあと数時間もすれば家に着くのだろう。あんなお転婆だった子が今では母親だなんて、私もすっかり歳を取るわけだ。
「なおくんはすっかりおしゃべりさんになってたわよ。ばぁば、ばぁばって。子供の成長は早いわねぇ」
あの人がずぅっと初孫の誕生を楽しみにしていたのを覚えている。あの子が生まれた時なんて、年甲斐もなく大はしゃぎしていた。
「うふふ、案外まだあの子たちと一緒にいたりしてね」
ナスの牛に乗って新幹線と併走する姿を思い浮かべてしまって、なんだかおかしかった。だって、あの人ならやりかねない。
「ゆっくり現世を楽しんで、また来年会いに来てちょうだいね」
仏壇で笑うあの人に語りかける。何となく、あの人の軽快な笑い声が聞こえたような気がした。
お題:旅の途中
1/31/2025, 3:56:50 PM