後悔
泣かない。それが娘の短所であると、夫は言っていました。娘は今年で17になる、高校生です。そそっかしく、神経質な私とは違い、娘は物覚えもよく、気配りもできる良い子でありました。けれど、突然娘が犬を飼いたいと言い出しました。その言葉を聞いて、私は息が詰まります。娘が責任を持って何かをしたい、ということは一度もなかったものですから、とても驚きました。もちろん、二の次にはいと申したかったのですが、私は今までに一度も、金魚さえ、動物というものを飼ったことがありません。あるといったくらいなら、学校の帰り道、野良猫をひと撫でしたくらいでした。
「犬を飼っている人に聞けばいいだろう」
と夫がいいます。
私は感謝を述べて、家を出ました。丁度、友人の息子が帰ってくる時間でした。
家のドアを開けると驚いた様子で、
「やだ。あなた、エプロン付けたままじゃないの」
と、いい、茶を啜っていいました。
「あの、聞きたいことが」
近所とはいえ走ったせいか、息苦しくて、私は膝をつきます。
その様子に気づいた彼女が、私のそばによって、背中をさすりました。
「大丈夫?ひどい焦っているようだけど、何か?」
「実は、」
そういいかけた時、玄関が開きました。学生服を着た男が、私を見下ろしています。
「や……ぁ、どうも。失礼」
私を跨いで先へ進みます。
「靴下履いたまま上がるんじゃないよ」という彼女の怒声が聞こえて、私は思わず笑いました。
「息子さんですか?」
「ああ、見るのは初めてだったね。二郎だよ、確か、あなたと同じ娘さんと同じクラスのはず」
「そうですか、すみません。突然上がったりして」
彼女
5/16/2024, 1:00:07 AM