お茶の時間

Open App

かつて私はこの手を取った。

そうして、全てを失った。
それでも、私は幸せだった。
何も知らない私は、無知な私は、
何処までも愚かで、
清々しいほどに真っ直ぐだった。
最期まで、この手を信じていた。

けれども私は知ってしまったのだ。
この手を取ることは、即ち
闇へ堕ちていく、ということを。

何故だろう、あれ程までに美しいと感じていた
微笑みが、酷く歪んで見えるのは。
私のことを見下して、
利用しようという顔に見えてしまうなんて。

何処か心の奥でストンと納得して。

私はこの手を取るのをやめる。
貴方には興味なんてありませんよと
猫のように顔を背けて傍を通り過ぎた。

そう、私はようやく光を見つけたから。
光と闇の狭間で、私は光に手を伸ばす。

今度こそは、この世界で生き延びてみせる、と。

12/2/2023, 12:05:22 PM