終わりなき旅
峠を越えて、風に吹かれて、日差しに貫かれる、苦しく疲れることばかりの旅。
放浪、そんな言葉が似合うな。
僕は何を目指して歩いている?どうしてこんなにも必死になっているんだろう。
何かを追い求めているのは知っている。
それは誰?
…ああ「人」なんだな。
あとは……胸元の花…?なんだこれ。この服に似合ってないよ。
枯れていない、むしろ鮮やかである。この地で摘んだのだろうか。
黄色い花は「誰か」が好きだったな。
「ーーあなたは「私」を追いかけるの」
男か女かわからない声が頭でぼんやりと響く。
「ううん、鬼じゃない。そんな恐ろしいものじゃない」
僕らは子供だった。
「花をみつけて」
花の蜜を追って?
「蝶になって!」
僕は今、ばっと後ろを振り向いた。
ああ。
緑が生い茂るずうっと向こうで、黄色い花が咲いているような。
花が枯れないくらい前のとき、そこで「あなた」を見つけたのだろうか。
僕は蝶になったのだろうか。
記憶が抜けているのは「あなた」のせい?
僕らはいつからこんなことを続けているの?
ねぇ?
誰か鏡をくれないか?これじゃあ手袋も外せないよ。
時がこれほど怖いなんて、恐ろしいのはどっちだよ。
「あなた」のことを考える。
いつ? 死ぬまで? 倒れるまで?
ー「私」を見つけて、忘れて、また見つけて。
ー初めましてを何回も?
タチが悪い。
さあ、終わらないかくれんぼを。
5/30/2024, 12:01:53 PM