届かぬ想い
神様へ
拝啓、神サマへ。
私はアナタを信じた事などありません。
それでもアナタに言いたいことがある。
…私は、アナタのように成りたかった。
アナタは存在するだけで人を救える。
信じていない人間でも、心の奥底で、神サマが存在することを願っている。
頭の何処かで、祈りを捧げている。
姿を現すだけで良い。
触れずとも、声をかけずとも。
罪を背負う者は、アナタの存在だけで救われる。
救いたかった。
人は人によってしか救えないと、信じたかった。
大好きだった姉を不幸な事故で失った時から、アナタを憎んで否定した。
だから、残された子どもを引き取った。
私は一人にしない、私が立派に育ててみせると、
アナタではない、亡き姉夫婦に誓った。
救えなかった。
あの子は何年経っても悪夢を見る。
一人助かった事実を否定する。
その度に手を握り、抱き締めた。
貴方のせいじゃない、と声をかけた。
届かなかった。
今も増える、手首の傷。
いつか、いつか癒える日が来ると、信じていた。
拝啓、神サマとやら。
これは、罰ですか?
私もあの子を置いて逝くのですから。
傲慢にも人が人を救おうとした事への。
アナタのように成りたいと思った事への。
母親に、成れなかった女への。
まぁ、私が死んだ所で傷にすらならないでしょう。
それなら、それでいいのかもしれない。
これ以上、あの子を悲しませずに済むのだから。
お願いだから。
悲しまないで。
母親に成れなかった女なんか忘れて。
これ以上、傷を増やさないて。
お願いだから。
「…神サマ、なんか成らなくていいよ」
とある病室。
様々な機械が取り付けられ、横たわる女の側には、パイプ椅子に座る学生服の少年。
「そんな…遠いモンになるなよ。…ずっと一緒にいてくれたの、アンタだろ」
泣き腫らしたその目尻には、また涙が浮かぶ。
「悲しまないとか……無理だって。バッカじゃねぇの……」
届かなくて良い。
そんな想いは、届かなくて良い。
少年は指を交差し、両手を握る。
その姿は、紛れもなく……。
4/15/2026, 1:43:37 PM