「君の目を見つめると」
濁った目だ。彼を初めて見た時、そう思った。
何にも期待せず、誰も映さぬ瞳は、いっそ哀れだった。
死人のような目。
光が届かぬ深い、深い、深海のような目。
今の彼の瞳を星空と例えるなら、昔の彼は濁った湖だ。
彼の目は、昔とは違う。
深海でも、濁った湖でもない。
ちゃんと生きているし、死んでいない。
今の彼は、星空を浮かべている。
絵画でも表せぬような、そんな瞳。
言葉にするのも、形にするのも覚束ぬ、そんな瞳。
そんな瞳に私を映して、彼はこう言った。
『夕日のようだ』と、暖かくて、優しい色だと。
『私の目を星空だというのなら、君は夕空だ』と。
4/6/2024, 1:26:53 PM