葉月

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「突然の君の訪問」

 ピンポーンとチャイムが鳴った。モニターのボタンを押すと、そこには誰もいなかった。いたずらかな?と一瞬思ったけれど、
「こんにちは」と声だけ聞こえた。気味が悪くなったので、玄関の扉は開けなかった。そして、またチャイムが鳴った。今度は、はっきりと
「わたし、ニンニよ!」と名前を言った。私は驚いて
「まさか!」と答えた。玄関の扉を開けると、はたして誰もいなかった。いないはずである。ニンニは透明人間なのだから。ニンニは、ぎゅっと抱きついてきた。何故だか、涙がこぼれてきた。ニンニも泣いていた。透明なニンニの頬に涙のしずくがほろほろこぼれた。
 私はニンニがどうやって、ムーミン谷からやって来たのか不思議に思ったけれど、とにかく家の中へ案内した。何か着せないとどこにいるかわからないので、タンスの中から、白いTシャツを取り出した。ちょうどニンニのワンピースとして、ぴったりだった。赤いリボンをベルトにして、残りはリボンにして髪飾りにした。
「いつまでも、ここにいていいのよ」言うと、
「いいえ、あなたを迎えに来たの」とニンニは答えた。あゝそうだったのかと納得はしたけれど、行けないことも良くわかっていた。おそらくニンニ自身も。

注意⭐︎久しぶりの物語。

8/28/2023, 12:58:02 PM