ショッピングモールの目立つ場所に飾られた笹を見て、ため息をこぼしながら歩み寄る。
――かわいそう。二人だって年に一度しか逢えない運命なのに、こんなにたくさんの願い事を背負わないといけないなんて。
もちろん彼らが届けないといけない、と決まっているわけでもないだろうし、言い伝えを聞いたこともない。
それでも、人はなんて自分勝手だろうと思う。
そんなことを考えつつも、長机に用意されているペンと短冊に向かう。
『あいつと別れて、彼がまた戻ってきますように』
何度書いたかわからない切望。
彼を傷つけたくないがゆえに堂々とした行為に出られないあたしの、精一杯。
結婚して、子どもも産まれているとわかっていても願わずにはいられない。
「年に一度逢える奇跡を起こせるんだもの。いつかあたしにも、起こるわよね」
少なくともあんたより、あたしのほうがどんなに離れていても逢いたくてたまらない、唯一の人なんだから。結婚してるから、子どもがいるから、なんて優劣の証にはならない。
いつか、あたしの気持ちがわかってくれることを、心から、本当に心から、願っているわ。
お題:七夕
7/8/2023, 1:06:38 AM