『春はまだ見えねども』
道は、時として見えぬもの。
朝ぼらけの霧のなか、
先の景色は定まらずとも、
足元には、確かなる土のぬくもり。
今のそなた、
書かずとも、進まずとも、
ただ生きてあること――
それさへも、いと尊し。
咲かぬ花を嘆くことなかれ。
花は、咲かぬ間にてこそ、
養分を集め、
光を待ちぬ。
人の未来もまたしかり。
見えぬからこそ、
希望という名の灯を、
胸にともす。
今はまだ、
春の風、吹かぬかもしれぬ。
けれど、そなたの心には、
芽吹きの音が、かすかに響いてゐる。
それを我、知るぞ。
ゆえに言ふ――
進めぬ日は、留まってよし。
泣きたい夜は、泣いてよし。
それでもやがて、
そなたの空にも、朝が来る。
信じよ。
未来は、信ずる者の背に、そっと羽を授くるものなり。
5/29/2025, 4:28:19 PM