『愛言葉』2023.10.26
我が家はいついかなるときも「好き」や「愛している」ということを伝えるようにしている。
うちが夫婦喧嘩をしないのも、そういったことが関係しているのかもしれない。
もともと、それを言い出したのは奥さんだ。
人間なのでイラついたりムカついたりすることもあるかもしれない。しかし、それを表に出すのは美しくない。というのが、奥さんの弁だ。
愛の言葉に慣れている奥さんは、たやすくやってのけるが、俺はどうにも苦手だ。苦手なことは苦手なのだと素直に言うと、奥さんはプロポーズの時はあんなに情熱的だったのにと反論してくるので、それ以上なにも言えなくなる。
しかし、それも最初だけで毎日、愛の言葉を聴いて口にすると慣れてくるものだ。
娘が産まれてから特にそう感じる。
とにかく娘は可愛いので、可愛いだの大好きだの言いまくっていたら、奥さんへの愛の言葉も自然と増えていった。
「好きっちゃ」
奥さんと二人きりのときに無意識にそう口にすると、普段は絶対に照れたそぶりを見せない彼女が、
「今の言い方、ちょっときゅんときた」
と恥ずかしそうに言ったので、
「愛してると。これからもずっと一緒にいてくれんね」
重ねていうと、奥さんはますます恥ずかしそうにしながら、頷いてくれた。
見つめ合う視線、縮まる距離、めくるめく甘い時間――
に突入しようかとしたそのとき、寝たと思っていたはずの、最近おしゃまになってきた五歳の娘にばっちり見られて、さんざんにからかわれたのだった。
10/26/2023, 1:09:19 PM