長月より

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 逃げ出してすまない。

 でも、言わせてくれ。あれは本当に僕には耐えられなかったんだ。その……君の思いをよく知らなかったから。

 だから、その、君が僕にどんな思いを抱いているのかわからなくて、僕だけが君のことを気に入っていると思っていて、僕だけが君のことを好きだとばかり思っていたんだ。

 いや、ごめん。嫌われていないというのはわかっていたよ。そうでなければ僕のあの無茶ぶりに付き合う奴はいないだろう。
 君は僕が面白そうだからやろうと言ったことに、代案は出してくることはあっても結構付き合って貰ったからね。
 でも……そうだな。野良猫に好かれた程度に思っているんじゃないかと考えていたんだ。ほら、猫はかわいいだろう? そう。猫だから変なことしてもしょうがないなみたいな気持ちで僕と一緒にいるものだとばかり思っていたんだ。違ったんだけどね。

 それで、僕はそんなことを思っていたから、君の僕に抱いているものが色恋のそれだとは思わなくて、その……もう、この話はやめにしないか? もう私は恥ずかしくって心臓が痛くて死にそうなんだ。正直、苦しい。

……ぅ、わ、笑うなよ。これでも本当に君にはすまないと思ってるんだぞ。たかが抱きつかれただけで逃げ出してから一週間も避けてしまったんだから。

 いや、そう。うん。だからごめん。

 今の私には刺激が強すぎるんだって……。

5/30/2023, 7:52:22 AM