月下の胡蝶

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お題《突然の君の訪問。》



再生をくりかえす、君。


その度俺は君に挨拶をする。




「はじめまして。私はクオリア――あなたの、騎士です」



君に公式の場で、そう挨拶をする。



――もし君が。



「犠牲になりたくない」と言ってくれたのなら、また違った未来があっただろうか。


でもそれは――“君”を否定すること。



だから、君の想いを俺は。


俺だけは、絶対否定したりしない。





夜の帳がおり、星屑が夜空を飾る。文机で書き物をしていたら控えめに扉を叩く音がした。不思議に思いながらも開けてみる。


そこに立っていたのは、紛れもなく君だった。淡い白雪色の長い髪に、寝間着のワンピース。胸には月色の魚のぬいぐるみを抱いている。



「――どうかなされましたか」


「あの、ね。クーアと一緒にねたい」


「……今、なんて?」


思わず素に戻ってしまった瞬間である。――まあ公式の場じゃないからいいか。そう自分に言い聞かせる。こんな発言、“君”からされたら……。



そんな想いなど露知らず、君はもう一度強く、言った。



「クーアとねるの!!」


「――本当に、困る」





君の訪問は俺をかきみだす。



8/28/2022, 11:48:44 AM