【目が覚めると】
カーテンの隙間から差し込む眩しい日差し。目が覚めるといつも、君の後頭部が視界いっぱいに飛び込んでくる。
「おはよう」
君の頭を軽く撫でながら挨拶を口にすれば、君はようやく僕の心臓から身を離すのだ。
「うん、おはよう」
まるで今が人生の絶頂期だとでも言わんばかりに幸せそうに、君はそう僕へと微笑みかける。
怖いのだと、いつだったか君は身を震わせた。朝起きて僕の心臓が止まっていたら、そう思うと怖くて怖くて仕方がなくて、鼓動を確かめずにはいられないのだと。健康体そのものな僕に対して何でそんな不安を抱くのかはわからないけれど、それで君の気が済むのならと好きにさせていた。
目が覚めると真っ先に、君が甘くとろけた笑顔を向けてくれる。それ以上の幸せなんて僕にはないのだから。
閉じたカーテンをちらりと見つめ、僕はすぐに視線を君へと戻す。腕の中に抱きしめた君の温度が僕の全て。君の望むまま、もう何年も出かけていない窓の外の世界になんて、未練すらもなかった。
7/10/2023, 12:24:40 PM