白樺

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 小さい頃、自分がヒーローになって、悪い敵を倒す夢を妄想したことはないだろうか。
 俺は、宇宙から侵略をしに来た敵に襲われそうになっていたクラスの奴らを華麗に助けて、チヤホヤされる妄想を飽きもせずしていた記憶がよくある。
そんなカッコイイ事をしたらクラスの人気者になれるんじゃあないか、なんて下心満載で考えていた自分を思い出すと今でも頬が赤くなる。
 今では、平々凡々な一般人兼大学生だ。知識を蓄え、宇宙人はいない、夢が現実になる事なんてない、そもそも平和が一番を理解した。
 純粋な子供らしさの殻が取れ、大人の仲間入りになってしまった俺には、何も観ても冷めた感想しか考えれない。こんな奴をピーター・パンが嫌うんだろう。まぁ観たことはないけど。悶々とジメジメしたような考え事を、冷たい隙間風が入るアパートでしていると、ピンポンとチャイムが鳴る。郵便物なんて頼んだっけ?そう思い、バイトで酷使した体に鞭を打ち、ガチャリと玄関を開けるとポツリと足元に大きな段ボールだけが置いてあった。
 そんな大きな物は注文していない!そもそも、余分なものを買えるほどウチの経済は潤ってない!誰だ置いたやつ、コレで金払えとか言うなよ。と、目の前の段ボール箱を2分以上も睨みつけていると段ボール箱から、音が聞こえる。ガザガザと音が鳴り勢いよく段ボール箱から何かが飛び出した。
「なっ!!!」
 バッと両腕を自分の体を守るようにして反射で目を閉じてしまった。衝撃が来る!と思ったが少し高い女性の声が聞こえてきた。
「こんにちは、私はアステルパーム、この地球の食文化について調査しに来た者です。私は、貴方達の言葉で言うと私は宇宙人です。」
 少しおかしな日本語を喋る目に光のないサイドテールの女の子。自称宇宙人。何処か冷静だった部分の俺は、この言葉を聞いたとき小さい頃の俺の記憶を思い出してしまった。

12/4/2024, 11:21:04 AM