あかるあかり

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『小さな幸せ』

 空に架かる虹の橋の足もと。
 虹の七色にすっぽりと包まれているどこかの街のひとは、まさか自分が虹に抱かれているなんて思いもしていないだろう。
 ささやかな幸せなんてその最中にいるときには、それが幸せだなんて気づかないものかもしれない。
 虹に包まれていることが、本当に幸せかはジャッジも微妙なんだろうけど、そこを含めて虹はささやかな幸せの喩えに誂向きだ。

 と、雨上がり、虹を見ながら得々と語っていた文芸部の先輩。

 たぶん、先輩も私も、どこかから見たらいまちょうど虹の足もとですよ。

 私は思ったけど云わなかった。
 先輩の得意満面を見つづけるほうが、私の小さな幸せだったからね。

3/28/2025, 11:15:18 AM