できるだけ曲線に、を心の中で唱えながら、背をぐうん、と伸ばす。
湾曲に手を、スラリと伸ばす。
手首をくるくると回せば、リボンもヒラヒラと舞う。
爪先を柔らかく滑らせて、ステップを踏む。
膝をバネに飛び跳ね、足首をクッションに、猫のように、着地する。
その間も手首を回さなくてはならない。
回すのをやめてしまえば、リボンも止まってしまう。
手首を柔らかく回しながら、私は跳ね回り、踊る。
リボンが一緒に鮮やかに舞いながら、くるくると踊り回る。
新体操を始めたのは、リボン競技に一目惚れしたからだった。
髪に結んだリボンも、競技をしているお姉さんと一緒に舞っているリボンも、びっくりするほど美しかった。
幼かった私は、それから熱心に親に頼みこんで、新体操を始めた。
最初にリボンを手に取った時は、感動なんてありきたりな言葉しか思いつかないほど嬉しかった。
同時に悔しかった。
最初っから、記憶の中のお姉さんのように美しくは舞えなかったから。
時が経って、昔から比べれば随分大人になった私には分かる。
私はきっと、あのお姉さんのように舞えない。
あのお姉さんと私は違うタイプの人間で、演技の長所も短所も違う。
しかし、リボンを持つたびに、あの時のハッとするほど美しい演技を、それを見た時の鮮やかな感動を思い出す。
今ではもうすっかり手に馴染むリボンは、未だに私の過去と、小さい頃私が描いた未来を繋いでいる。
私の大切な宝物。
このリボンは、私にとって、時を結ぶリボンなのだ。
何よりも愛らしくて、何よりも大切な。
手首を回すとリボンもくるくると舞う。
鮮やかに。
私の時を結びながら。
12/21/2025, 5:19:02 AM